本年度は、全身性強皮症で間質性肺炎のある患者に療法士による呼吸器運動療法を行い、その前後で患者からのデータ収集をおこなった。運動療法の内容は、血中酸素飽和度に配慮した間欠的運動療法とし、介入前後での6分間歩行距離および抽出された関連因子の評価を施行した。また、その一部について運動療法の効果の報告を行った。その結果、長期間(半年間)の運動療法を施行した場合、体力因子や心肺機能の変化がなくても運動時の低酸素血症が改善され、日常生活において血中酸素濃度の保たれたまま活動できる範囲が広がり、呼吸循環器系への負荷が軽減することが示された。これまでに一般的な間質性肺炎の運動療法による体力への効果についての研究は複数みられ、6分間歩行距離や筋力の向上として報告されているが、その有効例の因子については解明されていない。更に、低酸素血症に注目した研究はなく、今回の報告は生活上のリスク管理面での新しい知見となっている。 また、間質性肺炎患者の体力に関与する因子の結果については、重回帰分析で、肺拡散能(70%未満)、肺高血圧症(推定右心圧35mmHg以上)、年齢がその関連因子としてあげられ、本年度、その結果について論文発表を行った。この内容を含めた招待講演を6月と9月におこなっている。 現在、安静時基礎代謝量を含めた運動療法前後のデータが集積されている。来年度は運動療法の効果について因子分析をするため、症例データ数を増やし、運動療法に関わる要因の解明を行う予定である。
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