本年度は昨年度に引き続き、全身性強皮症で間質性肺炎のある患者に療法士による呼吸器運動療法を行い、その前後で患者からのデータ収集をおこなった。運動療法の内容は、血中酸素飽和度に配慮した間欠的運動療法とした。介入前後での6分間歩行距離および臨床データから肺機能を抽出しその関連性を検討した。 まず、症例報告として、長期間(半年間)の運動療法を施行した場合、体力や肺機能の変化がなくても運動時の低酸素血症が改善され、日常生活において血中酸素濃度の保たれたまま活動できる範囲が広がり、呼吸循環器系への負荷が軽減することが示され、これを論文発表した。これまでに一般的な間質性肺炎の運動療法による体力への効果についての研究はなされていたが、低酸素血症に注目した運動療法の研究はなく、今回の論文は生活上のリスク管理面での新しい知見となっている。 また、全身性強皮症による間質性肺炎患者18例について運動療法の介入を行い、介入しなかった12例と比較検討をおこなった。その結果、介入しなかった症例では体力は変わらず、約45日間の運動療法を行うと体力向上を認めることが示された。またこの体力向上と関連する因子としては、単回帰分析で推定右心圧と介入前の体力が抽出され、いずれも介入前に重度であると効果的であった。この結果を重回帰分析すると、抽出される要因は肺機能の程度とは関係なく、介入前の体力のみとなり、肺機能障害があっても運動療法を行うと体力については効果があることが分かった。本年度、この成果を国際学会で発表した。 間質性肺炎は原因疾患が多岐にわたるが、全身性強皮症に限定して運動療法を行った研究は少なく、疾患特異性に着目していることに意義がある。今回の研究により、当該疾患において未確立だった運動療法の効果が明らかとなった。
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