研究概要 |
本年度は本研究課題の最終年度であるため,昨年度までに開発が完成した遠心性収縮ペダリングシステムについて,実際の使用による効果判定を実施した。研究開始当初の計画では,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象とした臨床試験を実施する予定であったが,当初の予定から変更し,健常成人を対象として完成したシステムの安全性およびトレーニング効果について検討した。 今年度における研究目的は,遠心性収縮ペダリングシステムを用いたペダリング運動と従来の求心性運動パターンであるペダリング運動において,同一強度の運動が下肢筋力および大腿四頭筋筋厚に及ぼす効果について比較検討することとした。 対象は健常成人男性16名とし,無作為に遠心性収縮ペダリング運動群(ECC群)8名と従来のペダリング運動群(CON群)の8名の2群に分けた。そして各対象者の運動負荷試験から得られたpeakVO2の60%程度に相当する運動強度を決定し,ECC群,CON群に対し,週3回,1日20分,4週間のペダリング運動を実施させた。 またトレーニングの前後において,下肢筋力測定(等尺性膝伸展筋力),および大腿四頭筋筋厚(超音波診断装置による筋厚)を測定した。そして4週間のトレーニング後,各群におけるトレーニング前後の下肢筋力および大腿四頭筋筋厚の変化と各群における変化量の差を統計学的に分析した。 その結果,ECC群もCON群もトレーニング前後において下肢筋力および大腿四頭筋筋厚の有意な増加を認めたが,その変化量はECC群において有意に高かった。さらにECC群は運動中における自覚的運動強度および平均心拍数がCON群に比べ有意に低かった。 以上のことから,遠心性収縮ペダリング運動は従来のペダリング運動に比べ,安全にかつ効果的なトレーニング効果が得られることから,呼吸リハビリテーションへの応用が期待されることが明らかとなった。
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