本研究の目的は、QOLの低下が懸念される地域在住の高齢者を対象に、研究代表者らがこれまで考案してきたグループ回想法プログラムを基に、より地域に根ざした実践的で実効性のある回想法プログラムを開発することにある。 21年度は、回想を効果的に促すため、回想刺激と回想との関係について調査を行い、匂い刺激に対して回想経験を有する者ほど、肯定的な回想をする傾向にあることを明らかにした。そのため、22年度では、会話以外に回想刺激として匂い刺激を用いた回想法プログラムを作成し、その有効性を検討した。 具体的には、同意の得られた地域在住高齢者を対象に、2週間に1回の頻度で90分程度の回想グループセッションを計8回実施した。その内容は、非時系列なテーマを設定し、回想を促すために嗅覚を刺激することができる材料を各セッションで1つ用いた。リーダーは、地域のNPO法人回想法センターの職員が担当し、サブ・リーダーはボランティア登録している高齢者が担当した。パラメータとしてGeriatric Depression Scale(GDS-15)、Life Satisfaction Index K(LSIK)のスケールを用い、ベースラインと終了後間をt-testにより検討したところ、GDS-15(p=0.04)において有意な減少が認められた。 以上のことから、嗅覚刺激を伴った物品提示によるグループ回想活動は、高齢者の精神的健康に対する短期的な効果を示す可能性が示唆された。更に、高齢者ボランティアなどの民間レベルの活力を生かして、その効果を示すことができたことは、グループセッションに参加した高齢者だけでなく、スタッフ(ボランティア)として参加した高齢者自身のQOL向上も期待でき、今後の介護予防事業の一つのモデルを提示することにも繋がると考えられる。
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