目的は端座位での一側脚挙上運動における運動学的解析を行い、次の4つの運動戦略に伴う筋活動と下肢挙上前の姿勢変化を同定し、運動戦略と筋活動の関連性を明らかにすることである。運動戦略は、(1)体幹を支持側へ傾斜する戦略、(2)体幹を伸展位に保ったまま骨盤および体幹を支持側へ変位する戦略、(3)体幹を後方へ傾斜し足底を離床する戦略、(4)重心移動を行わず足底を離床する戦略の4戦略とした。対象は健常成年男性13名を対象に、端座位での右下肢挙上動作を上記4運動戦略に基づき、音・光合図に応答し素早く挙上し3-4秒保持する課題を行い、その時の姿勢変化を3次元動作解析装置と市販のDVDカメラで記録した。同時に次の8筋から筋電図(10Hz~500Hz)を導出した。各計側データは、合図の信号をそれぞれに出力し同期させた。導出筋は、右下肢挙上動作の主動作筋として、右大腿直筋、支持脚(左)姿勢調整筋群として、前脛骨筋、ひらめ筋、大腿外側広筋、大腿二頭筋、中殿筋、および左右の脊柱起立筋の8筋とした。結果は、右下肢挙上(離床)前の姿勢変化として、4つの運動戦略に基づく体幹側方及び後方傾斜が3次元動作解析による座標変化及びDVDカメラの映像として確認できた。右下肢挙上動作の主動作筋である右大腿直筋の活動開始を起点として、各筋の活動開始を筋電計のディスプレー上で動作開始前の筋活動レベルを基準に目視し決定した。各運動戦略の各筋の活動開始を一元配置分析及び多重比較を行い検討した。(1)戦略では、左脊柱起立筋→左前脛骨筋・ひらめ筋や→右大腿直筋(主動作筋)、(2)戦略では、左の脊柱起立筋→左の前脛骨筋・ひらめ筋や→左大腿外側広筋→右大腿直筋、(3)戦略では、左右脊柱起立筋・左前脛骨筋・ひらめ筋→右大腿直筋、(4)戦略では、右大腿直筋の活動後に他の筋群の活動が認められ、それぞれ統計的有意差が認められた。(4)戦略では本動作おける予測的姿勢制御が機能しない可能性が示唆された。
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