今年度の研究目的は、慢性期脳卒中片麻痺患者を対象に端座位で健側下肢挙上動作開始時に見られる重心移動に伴う体幹傾斜角度を計測し、立位バランス機能及び歩行能力との関連性を明らかにすることである。対象は、本研究の趣旨及び実験内容について理解し協力及び参加を承諾して頂いたH病院の通所リハに通院している片麻痺患者40名、平均年齢68.8歳(SD:7.7)男性21名、女性19名、介護度は支援1から介護4であった。運動課題は高さを調整できるプラットフォーム上に膝関節約90度の端座位から前方に設置したLEDランプの発光と音を合図に健側下肢股関節屈曲運動(下肢挙上)を行い3秒停止する課題である。この運動課題開始前約5秒前から運動課題終了時までの姿勢変化とLEDランプ発光を前額面(後方)と矢状面(側方)よりデジタルVTRカメラ(JVC : GZ-X900)で記録した。反射ボディーランドマーカーを、第7頸椎突起、左右肩峰、第4腰椎突起、左右腸骨稜、大腿部遠位、第1足指部位貼付し、体幹傾斜角度計測基準とした。体幹傾斜角度は、運動開始合図前の安静姿勢と合図後下肢挙上開始をVTRから同定し静止画に変換しPCディスプレー上で両姿勢間の角度変化を計測した。その角度と立位バランス機能としてTUG (timed up and go)と10m歩行時間歩数及び下肢ブルンストローム回復段階(BS)との相関性をスピアマンの順位相関で比較した。結果は、左右傾斜角度は、TUG、10m歩行時間、歩数、BSとそれぞれ0.7、0.69、0.61、-0.54で有意な相関性が認められた。体幹前後傾斜角度は、TUG、10m歩行時間、歩数、BSとそれぞれ0.3、0.3、0.21、-0.46で相関性は低く、歩数との有意性は認められなかった。これらのことから、脳卒中片麻痺患者において、端座位での健側下肢挙上における重心移動時の左右への安定性が良い方が立位バランス及び歩行能力が高い傾向があることが示唆された。
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