研究目的:回復期脳卒中患者を対象に、端坐位での健側下肢拳上開始時にみられる身体重心移動に伴う体幹傾斜角度を計測し、歩行機能及び日常生活活動能力との関連性を明らかにすることである。また同時に1か月程度のリハビリテーション治療過程の中で、端坐位での健側下肢拳上開始時にみられる身体重心移動に伴う体幹傾斜角度の変化や歩行機能及び日常生活活動能力の変化についても検討することである。対象と方法:回復期病棟を持つH病院(札幌市)の協力を得て、端坐位が可能な脳卒中片麻痺患者で、研究への参加について同意を得た24名を対象とした。平均年齢76.3歳、男性12名、女性12名、左片麻痺13名、右片麻痺11名である。なお、2名は、端坐位で上肢支持が必要で下肢拳上が不可であったので対象から除いた。1名は歩行能力の計測データが不備であったため除外し、21名を分析対象とした。体幹の傾斜角度は、被験者の後方からVTRカメラで前額面の姿勢変化を記録し、画像計測ソフトImage Jを用いて角度計測をした。下肢拳上は自作のフットスウィッチで離床をLEDで発光させVTRカメラに同時に収録した。歩行はTUGと10m歩行時間を測定し、生活活動能力はFIM及びBIを計測した。結果:歩行不可能群12名、歩行可能群9名が抽出され、それぞれの端坐位での健側下肢拳上開始時の体幹傾斜角度は、平均0.93度と0.75度であり、健側下肢拳上中の体幹最大傾斜:角度は、平均3.57度と2.00度であり、健側下肢拳上中体幹最大傾斜角度において有意差が認められた。歩行不可能群と歩行可能群との生活活動能力には有意な違いが認められた。歩行群における体幹傾斜角度と歩行能力の関係については正の相関の傾向があるものの統計的有意差は認められなかった。考察:回復期脳卒中患者における端坐位健側下肢拳上動作における予測的姿勢制御は歩行能力の有無にかかわらず認められるが、下肢拳上後の体幹重心移動の安定性が歩行能力に関連することが示唆された。
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