研究課題/領域番号 |
21500484
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
高柳 清美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20274061)
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研究分担者 |
金村 尚彦 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (20379895)
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キーワード | 膝前十字靭帯 / 自然治癒 / 関節制動 / リアルタイムPCR法 / タンパク質分解酵素 / mRNA / MMP-13 / TIMP-1 |
研究概要 |
膝前十字靭帯(ACL)損傷は発生頻度が高いスポーツ損傷で、手術を行わず自然治癒を期待する保存療法では靭帯の治癒は起こり憎いと考えられている。しかし、これまでの臨床研究によって、正常な関節制動により靱帯が治癒する可能性が示された。我々はACL切断に対する自然治癒の動物モデルを考案し、ACL治癒の可能性と治癒靭帯の強度について検討した。異常運動を制動し、自然飼育することにより、ACLの治癒が促進され、正常強度の40~50%であることを明らかにした。 本研究の目的は、新たな靭帯損傷モデルを考案すること、およびACL治癒要因の解明のひとつとして、損傷ACLの早期の関節制動の有無によるタンパク質分解酵素の動態を明らかにすることであった。結果は、ACLの組織像として関節制動群、非制動群ともに術後5日の時点でACLの断端が確認され、連続性は共に認められなかった。リアルタイムPCR法によるmRNA発現量は非制動群が1、3、5日と時間経過とともにMMP-L13mRNA発現量が増加し、関節制動群に比べて有意に発現量の増加が認められた(ρ<0.05)。TIMP-1 mRNA発現量は関節制動群と非制動群共に全ての時期にて有意な増加は認められなかった。本研究結果より、損傷直後、損傷ACLおよび関節内組織から発現するMMP-13のmRNAを関節制動により抑制させることが明らかになった。非制動群では、関節内組織の協調的なMMP-13mRNA発現が増加し、拮抗的に作用するTIMP-1 mRNA発現量が少ないことによりACLを退縮・消失させ、同時に二次的に発生する変形性関節症の誘因となることが示唆された。関節制動はACL損傷により発生する細胞外マトリクスやコラーゲンの分解や吸収を抑制する可能性が考えられ、損傷ACLの保存的治癒に繋がることが示唆された。
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