2011年度は、3年間にわたる研究の3年目である。 2009年度に構築した、自食時の捕食動態に関する計測システムを利用し、成人知的障害者における自食時の捕食状況について研究を行った。なお、計測システムは2つのサブシステムからなる。スプーンの計測システムは、スプーンに口唇圧センサーとスプーンのひずみを計測するためのセンサーをつけ、データ処理用ソフトウエアーを使用して解析を行なった。また、上肢動作を計測するためのサブシステムは、3次元動作解析装置を用いて、捕食に関連する上肢動作およびスプーンの動態を計測した。 2011年度の対象は、研究に関して研究者から十分な説明を受け、保護者および施設長からの文書での同意の得られた1歳から5歳の定型発達児である。 結果より、下唇接触持続時間では1~4歳と5歳群間、下唇接触ピーク時間では2~4歳と5歳群で、下唇接触積分値では2~3歳と5歳群で有意差が認められた。口唇圧積分値および口唇圧最大値では1~4歳と5歳群間で有意差を認めた。口唇圧積分値および口唇圧最大値が他の年齢群に比較して5歳群で有意差が認められた。これらのことから、自食時の捕食機能は5歳群で質的に変化することが推測された。また、下唇接触のピークまでの時間は2~4歳群に対して5歳群は有意に長いことや下唇接触持続時間が5歳群で有意に長いことから、自食時の口唇圧産出のためには、下唇がスプーンを安定的に保持することが一要因であることが推測された。
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