リハビリテーション医学の分野において、ポストポリオ症候群(PPS)に関しての研究は概して四肢の筋力低下、および装具に関してのものが多く、頭頸部に関しての研究は皆無である。逆に耳鼻咽喉科や歯科でもPPSとの関わりを検討したような研究はみられない。しかしながら、PPS患者の多くが嚥下障害・顔面神経麻痺・難聴・顎関節症・味覚障害など耳鼻咽喉科・歯科的疾患に悩んでいる。日本国内には、PPSでかつ頭頸部疾患を有する患者は数万人存在すると考えている。その中でも、特に球麻痺型の患者にみられる嚥下障害などは、直接生命に関与した疾患であるため、早期にPPSとの関連性を証明し、その予防法・治療法について確立する必要があるため今回の検討を行った。 今年度は関東を中心に資料収集を行った。資料は、鶴見大学歯学部附属病院にて収集した。被験者は8名で、収集した資料は顎関節MRI画像、回転方式パノラマX線撮影像、顎関節断層撮影像の各画像検査結果である。顎関節症を訴えるものが半数以上おり、ほとんどの症例において実際に顎関節に異常を認めた。また、顎関節の異常を自覚していないものでも全員に骨変化や関節円板の前方転位といった異常がみられた。四肢の片側麻痺を有する患者においてはその患側に強くみられる傾向があった。また、特異的な口腔内所見としては多数のものに歯の咬耗がみられた。咬耗によっても顎関節症の発症が起こったとも考えられる。今後、関東地方で数名の顎関節症の自覚のない被験者を募り、症例数を増やし、検討を行い発表する予定である。
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