研究概要 |
【研究の目的】人工膝関節置換術(以下TKA)・人工股関節置換術(以下THA)の多くは術後に痛みの消失が得られるが、Engelら(2004)はTKA・THA術後の行動範囲の回復には、痛みの消失だけでなく患者の“自己効力感”が影響すると報告している。本研究の目的は、下肢人工関節術後患者の行動範囲を拡大させる認知行動療法的な術後介入プログラムの作成と術後療法経過中の自己効力感を測定して我々が作成したプログラムの効果の検証することである。平成21年度には、痛みや自己効力感の経時的変化を明らかにし、患者の行動範囲やQuality of Life(QOL)に影響を与える因子を明らかにすることを目的とした。【対象】2010年に2専門病院(大阪、宮城)で片側初回THAまたはTKAを施行した81例(THA65、TKA16;男性13、女性68;平均年齢66.3±9.6歳)【方法】術前、退院時、退院1ヵ月後にTimed up and go test、痛み(VAS)、自己効力感(Falls Efficacy scale : FES)を、術前と退院1ヵ月後に行動範囲(Life space assessment : LSA)、健康関連QOL(SF-36、 WOMAC)を評価した。【結果】痛みは漸次減少し、FESは漸次増加した。痛みとFESの関連は小さかった(退院時r=-0.194)。LSA、 QOLを目的変数、TUG、 FES、痛みVASを説明変数とし、性、年齢、術式(THA or TKA)、重症度(KL分類)で調整した共分散分析の結果、FESのみが目的変数と有意な関連を示した(FES低群vs.FES高群:LSA, 55.5vs.64.8 ; QOL身体機能52.6vs.66.3; WOMAC 74.8 vs.82.5)。【結論】QOLや行動範囲をTHA・TKAのアウトカムとした時、自己効力感は移動能力や痛みよりも大きな影響を与えると考えられた。
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