人工膝関節置換術(以下TKA)・人工股関節置換術(以下THA)の多くは術後に痛みの消失が得られるが、Engelら(2004)はTKA・THA術後の行動範囲の回復には、痛みの消失だけでなく患者の"自己効力感"が影響すると報告している。本研究の目的は、下肢人工関節術後患者の行動範囲を拡大させる認知行動療法的な術後介入プログラムの作成と術後療法経過中の自己効力感を測定して我々が作成したプログラムの効果の検証することである。平成23年度は、前年度に療法士を早期介入群と後期介人群に分けて行なった認知行動療法的プログラムに関する研修会(早期介入群-A研修会、後期介入群-B研修会)を、それぞれの群が前年度に受けなかった研修会について受講してさらにデータの収集を行なうこととこれまでのデータを解析することである。 平成23年11月11日に後期介入群に対してA研修会を開催した。早稲田大学人間科学院教授熊野宏昭先生による認知行動療法の基本理論やスキルを学び、患者の移動に関する自己効力感低下を改善することを目指した講演が行われた。平成24年3月7日に早期介入群に対してB研修会を開催した。関西医科大学整形外科講師和田孝彦先生による人工股関節置換術の歴史と現状、小室整形外科医院院長小室元先生による人工膝関節置換術の講演が行われた。その他に、11月11日には認知行動療法的介入に関するロールプレイを、3月7日にはこれまで行なった研究についての討論を行った。研修会は仙台(東北大学)・大阪(関西医科大学)をインターネット回線で結んで行った。評価項目は、活動範囲、転倒関連自己効力感、健康関連QOL、疾病重症度、疼痛、運動能力、脚長差などとした。症例数は、前半156例(うち平成22年度51例)(大阪・関西医大滝井病院134例(うち平成22年度31列)、仙台・松田22例(うち平成22年度20例))、後半12例(大阪・関西医大滝井病院11例、仙台・松田1例)であった。
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