研究概要 |
われわれのこれまでの研究において,膝関節痛を有する中高齢女性(女性)の歩行時の運動力学的特性を明らかにすることが出来た。しかしながら、膝関節痛を有する女性が運動力学的特性の異常を生む要因として下肢筋の運動単位の活動様式の問題が存在することが推察された。そこで,運動・動作に関する運動生理的変化の指標として,片脚起立動作時に認められるswitching silent period(SSP)に注目した。膝痛を有する女性の下肢筋の運動生理的変化の指標として,トラッキング動作時の股関節・膝関節周囲筋のSSPが有用であることを実証することを目的とした。具体的には,運動生理的変化の指標としてのSSPと運動学・運動力学的指標との関連性を検証する。さらに,われわれが推奨する股関節周囲筋の筋機能改善エクササイズが運動生理と運動学・運動力学の両見地から有効であることを検証した。その結果,以下のことが明らかとなった。 1.中殿筋において,片脚起立動作時に認められるswitching silent period(SSP)が認められたが,その出現には個人間でばらつきが大きかった。 2.健常人で,SSPが認められた片脚起立動作時と認められない片脚動作時の下肢関節の運動学と運動力学的要因を比較したが,明らかな違いは認められなかった。 3.膝関節痛を有する高齢女性は,片脚起立動作時の中殿筋筋活動は高かったが,症状特異的な変化は認められなかった。 4.股関節筋機能改善運動は,片脚起立動作時における中殿筋のSSP出現に影響を与えるという証拠は本研究では示せなかった。
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