脳卒中後の上肢麻痺の回復を促進するための手段の1つとして左右鏡像運動が注目されている。上肢ロボットは左右鏡像運動を効率よく行うことが可能であるため、今回、脳卒中急性期患者を対象に、上肢ロボットによる左右鏡像運動訓練の前後に多チャンネル近赤外線測定装置を用いて、上肢に該当する運動野における脳賦活訓練による脳賦活の影響を調査した。同時に、中大脳動脈平均血流速度、心拍数、心拍出量の測定し体循環と脳循環の評価を行った。 脳卒中急性期患者の約半数は、比較的軽度の麻痺であり研究対象とならないことが多い。逆に、重度の上肢麻痺が残存している場合、さらに重度の失語症、注意障害、半側空間無視を合併し、本研究の除外基準項目に該当するため、研究対象から除かれることがある。そのため、本研究の対象となる患者が極めて少ないのが現状である。 本年度対象基準を満たした対象者は6名であった。うち3名は5週間の本研究期間を満たさず他院に転院となった。残り3名が5週間の研究期間を満了したが、そのうち1名は初期評価で中大脳動脈の流速度が測定不可能であった。 本研究の対象者は、中等度~重度の上肢麻痺を有する者であり、訓練実施後も麻痺の改善は乏しく、上肢に該当する運動野の脳賦活は得られにくい傾向にあった。反対に、補助手レベルまで麻痺が改善したものは、上肢に該当する運動野の脳賦活が得られやすい状況にあった。また、中大脳動脈平均流速度や心拍出量や心拍の評価により、上肢ロボット訓練は、脳卒中急性期患者に対しても脳循環や体循環にほとんど影響を及ぼさないと考えた。
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