脳の可塑性が見直された今日、脳卒中片麻痺上肢の機能障害に対する直接的なアプローチが検討され、ロボット技術を用いた上肢の訓練機器の開発が進んでいる。その上肢ロボット訓練機器のうち、高強度の両上肢の反復動作訓練を可能にしたアームトレーナー(AT)がある。一方、経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直流電気刺激(t DCS)による障害大脳半球に対する直接賦活効果も注目されている。これらの療法を組み合わせることで、訓練効果をより増強させ、慢性期であっても片麻痺上肢の機能回復が期待されているが、臨床での研究が進んでいない状況にある。 本研究では、脳卒中片麻痺上肢に対するt DCSおよびATとを組み合わせた複合訓練を実施し、その特異的訓練効果を明らかにすることを目的としている。亜急性期・回復期・維持期の脳卒中片麻痺患者を対象に、治療介入効果を検討する。その際、t DCSの極性の違いによる刺激効果の程度についても検討する。 平成22年度は、対象者18名に対して「t DCS+AT(約2週間)」の本実験を実施し、詳細なデータを収集し、解析を行っている段階である。また、訓練後の長期効果についても対象者を引き続き追跡し、再評価を実施している。
|