触刺激により本人認証のための認証キーを構成するにあたり、本研究の狙いは、この触刺激を(1)触刺激素子間の仮現運動、(2)触刺激素子とファントムセンセーション像間の仮現運動、(3)ファントムセンセーション像間の仮現運動なる3種類の仮現運動で構成するところにある。仮現運動ベースの触刺激を利用することは、この触刺激でコーディングされる情報(認証キー)の解釈のし易さや触感としての記憶のし易さ、バリエーション確保といった点において有利である。H22年度は、ファントムセンセーションと仮現運動からなる触刺激を複数個(3~5個)の触刺激素子によって生成し、この触刺激に対する心理反応(刺激弁別や嗜好)を生体計測の実験システムにより評価・推定するためのシステム構築を行った。構築した実験システムは、旧実験システム(触刺激生成システム+32ch生体アンプ+触圧センサ)に身体動揺を実時間計測する動態計測システム、ウェアラブルな加速度センサ、および重心動揺計を追加することによって構成された(拡張実験システム)。この拡張は、特定の実験環境下における仮現運動の認知が身体の動揺を伴うとの知見を受けてのもので、ファントムセンセーションと仮現運動からなる触刺激に対する心理反応(刺激弁別と嗜好)の評価・推定のうち、仮現運動認知(刺激弁別)に関連する反応の評価・推定において性能向上を図ったものである。具体的には、仮現運動認知時におけるヒトの認知反応を拡張実験システムによって計測、各計測データ間を相互情報量の観点で解析し、特徴抽出を行った。結果として、先行研究で報告されていた仮現運動認知時の身体動揺を3軸加速度センサおよび重心動揺計で確認すると共に、単一試行の計測によりこの反応が捕捉できる可能性を確認した。更には、本人認証システム構築のためのニューラルネットワークを利用した触刺激入力補正システムについて検討を行った。
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