本研究は、Webセーフカラー216色の輝度、色度、及び分光輝度を精密に測定することによって、高齢者に配慮した色覚コントラストに関する規格を詳細に検証するとともに、Web画面の作成者に対して、候補色やコントラスト適合性をリアルタイムに判定できるシステムを提供することを目的としている。 今年度は研究の初年度として分光放射輝度計を導入し、実験用ソフトウェア作成と併行して液晶ディスプレイ装置の較正を行い、呈示光に対する分光放射輝度の測定を実施した。実験成果の概要は以下の通りである。 (1)暗室、および昼光色蛍光灯を点灯した状態で、sRGB規格に準拠したWebセーフカラー216色の分光放射輝度を測定し、データを収集することができた。現状では、データはCSV形式のファイルとしてPCに蓄積されているが、オンラインRDBによるデータベース化によって、データの検索・利用を容易にするシステムを構築する予定である。 (2)(1)で得られたデータに基づき、WCAG2.0の有効性について検討した。その結果、JIS S 0031年代別分光視感効率が加齢に伴い短波長側で減少しているため、447nmにピークがある青色光に対する感度が低下し、年代別相対輝度の大幅な減少が見られた。従って、若年者であればWCAG2.0クラスAAAを満たすコントラスト比の2色が高齢者には適合しなくなるケースが、特にHSV色相240°を中心とする青系統の領域で多く見受けられた。
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