本研究課題では、手動操作が困難な身障者や高齢者が「唇の動き」で操作できる次世代型「介護用電動車いす」の実用化を目指す。その場合、安全でかつ容易に操作できるだけでなく、車いすの走行がスムーズで「乗り心地」が自然であることが重要である。この目的の下、以下に研究に取り組んだ。 1)個人差や環境の変動に影響されない強固な走行操作端末としての読唇システムの検討:高い認識精度を実現するためには、正確な口唇領域の抽出が期待される。本研究では静的環境で撮影された発話シーンでなく、ユーザの自然な顔の動きや光源環境が変化する動的環境においても安定に抽出が行えるよう、顔全体が写る画像に対する抽出法を提案し、さらにリアルタイム処理化を図った。静的環境で撮影した発話シーンおよび動的環境で実験を実施した。これら読唇に関する成果は学術論文1件、国際会議2件、国内学会3件で報告した。また学術論文1件の採録が決定している。 2)障害物回避およびスムーズな走行を保障するための補助システムの設計:学校や病院などの多くの公共施設は複数のフロアがあり、エレベータが設置されている。しかし、これまで移動ロボットに関する研究でフロア間移動について議論されていない。そこでエレベータを利用してフロア間の移動が可能なシステムを開発した。またこれまで車いすの前方に搭載した超音波センサでは検知範囲の制限および精度の問題があった。そこでレーザレンジファインダを搭載し、車いすの周囲環境を広範囲かつ高い精度で取得できるよう改善した。さらにEKF-SLAMを実装し、壁沿い走行機能を組み込んだ。壁沿い走行に関する成果は国内学会で報告し、また国際会議へ投稿予定である。
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