研究課題
研究最終年度となる本年度は、発話動作をおこなう器官を全て機械系によって構成した発話ロボットを応用し、聴覚障がい者の不明瞭音声からその口内の発話動作を再現するシステムを構築した。聴覚障がい者は自身の発話音声を聞くことができないため、発話しては聴くという聴覚フィードバック学習が不可能であり、明瞭な声の獲得が困難である。本発話ロボットは、人間の乳幼児のように聴覚フィードバック学習によって自律的に発話動作の獲得が可能であり、物理的な発話動作と、そこから生成される音声の関係を、適応的に獲得できる。そこで、音声の不明瞭要因を抽出、分類することにより、その要因となっている口内動作を発話ロボットによって再現し、発話障がい者のための対話による訓練システムを構築した。ロボットの発話動作の学習には、2つの自己組織化マップを組み合わせたdual-SOMを提案した。また、音声の自律学習の妥当性について検証するために、ロボットの獲得した音声と被験者の実音声の音響的特徴を比較するとともに、聴覚障がい者の発話時のMR画像とロボットの声道形状についても特徴的形状に着目して考察をおこない、共に良好に再現できていることを示した。研究の総括として、聴覚障がい者が、見本となる発話動作や口内の動きを見ながら、対話的に発話訓練をすることができるシステムを構築した。まずロボットが、発話障がい者の不明瞭音声を生じる原因となる構音動作を再現する。同時に、音響特徴マップにより、発話者の不明瞭音声と目標音声の距離を呈示する。訓練者は、構音動作および音響的特徴の違いを、ロボットと音響マップにより「視覚的」に確認、理解しながら、明瞭な発話が可能になるまでこれを繰り返して訓練をおこなう。県の聾学校およびリハビリテーション病院の協力を得て、ロボットによる対話型発話訓練システムの実証実験をおこない、その有効性を示した。
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日本機械学会論文集(C編)
巻: Vol.77, No.775 ページ: 1062-1070
International Conference on Human System Interaction
ページ: 203-208
ページ: 409-414
http://www.eng.kagawa-u.ac.jp/~sawada/