電動車椅子の操作支援機能に関する研究成果として,全方向移動機能を生かすことができる「ポテンシャル法を適用した衝突防止機能」を提案した.この機能は,たとえば,狭い入口へ全方向移動機器と対向者が同時に進入しようとした場合に,全方向移動機器が開口部の手前で横に通過者を避けて,対向者が狭い開口部を通過するの待ってから,出入り口に進入する行動を発現した.すなわち,提案する操作支援機能によって,譲り合う行動が発現することを確認した.さらに,大まかではあるが障害物の存在方向を推定して,障害物を回避できる,「超音波センサを用いた衝突防止機能」を構築した.超音波センサの利用によって,ガラスなどの光を透過する物体との衝突を回避可能となり,安全性が向上した. また,障害を持つ子ども達の移動体験を豊かにするために移動支援機器の充実を行った.平成23年から子ども達の移動体験に採用している前輪駆動型電動車椅子においては,座面の昇降機能の搭載を発案し試作機を作成した.この電動の座面昇降装置を活用すれば,座面を高くして自分と同じ年代の子ども達と同じ目線でのコミュニケーションが可能となり,座面を低くして地面にあるボールや草花など興味を引くものに自分の力でアプローチできるようになった.この機能によって自らの能力を生かして移動経験を豊かにすることができる.前輪駆動型電動車椅子は重度障害児のリハビリテーション施設での利用が進み,実機による実走実験において,早期からの移動体験の有用性が確認された.さらに,子ども達の遊びを広げるために有用であると考えている「全方向移動機器」に,人に追従する機能を搭載した.この機能を応用して,操作能力の低い子ども達でも,たとえば,「鬼ごっこ」のようにして,移動体験を楽しむことを可能にした.この機能には,障害物との衝突を防止する機能が組み込まれており,安全な移動体験を実現している.
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