長下肢装具は足関節および膝関節まわりの筋力低下者の歩行補助のために使用される装具である。従来の長下肢装具では膝関節固定のものが多く、なめらかな歩行が困難であった。これに対して近年、足関節の動きや足の接地状態を感知して、膝継手の固定と解除を行う長下肢装具が開発されたが、屈曲解除のタイミングの不具合や不整地への対応などに問題があった。一方、研究者らは過去の歩行分析の研究によって、歩行中の下肢関節まわりでは制動の補助が重要であることを示し、これに基づいて油圧ダンパーを使用した短下肢装具を開発した。本研究では、長下肢装具の継手に油圧ダンパーを組み込むことによる歩行改善の可能性を検討することが目的である。 平成22年度の研究では、足継手に油圧ダンパーを組み込んだ長下肢装具を試作して健常者3名および下肢筋力低下症例1名を対象とした計測を実施した。長下肢装具を使用して歩幅と歩調を変えたさまざまな歩行を3次元動作分析装置を使用して計測し、装具側離地と反対側接地のタイミングを推定するパラメータの検討を行った。評価パラメータとして足関節角度、足関節モーメント、膝関節モーメント、下腿部傾斜角度、大腿部傾斜角度、フットスイッチを選択してタイミングからのずれとばらつきについて検討した。その結果、足関節モーメントのピーク値がもっとも正確に反対側接地のタイミングを推定できることが明らかになった。また、足関節モーメントのピーク値は歩行速度の変化の影響を受けにくいことも明らかになった。これらの結果より、足関節モーメントに相当する装具足継手に組み込んだ油圧ダンパーの抗力を計測するセンサーつき長下肢装具を試作した。次年度は試作装具を使用し、センサー出力で膝継手屈曲のオンオフ制御を行う方法について検討する予定である。
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