研究概要 |
頸椎損傷や筋ジストロフィー,筋萎縮性側索硬化症(ALS)などによって,四肢が麻痺している他,発語も困難な重度障害者にとっては,日常動作や福祉機器の操作,家族や介護者との意思伝達にまで不自由さを伴う.現在,障害者用の支援機器は数多く開発されているが,上記の重度障害者が容易に操作できる機器は殆どない.そこで,重度障害者においても随意的に動かすことができる「舌の動作」によってPC用のマウスを操作し,文字入力などを行う,重度障害者用のコミュニケーション支援機器として「舌マウス」の開発を目指している.2010年度の実施内容と成果を下記に示す. 1. 口腔内に設置可能なリモートコントローラーの評価 新たに製作した4chおよび5chタイプの口腔内リモートコントローラーの通信特性を明らかにするために,実利用環境を模して大気中,水中,肉塊内における安定的な通信が得られる最大通信距離の測定を行った.その結果,各測定条件において,いずれのタイプも最大通信距離は約71~135[mm]であり,十分な通信特性を有していることが確認された. 2. コントロールソフトの改良 「舌マウス」システムのコントロールソフトの改良を図った.昨年度までの"自動文字入力機能"に加え,"クリック"や"ダブルクリック"の機能を追加すると共に,操作性の向上を図った. 3. 「舌マウス」システムの有効性の検討 「舌マウス」システムの有効性を検討するために,規定した同一文章を異なる手法で入力し,それぞれの所要時間を計測した.入力手法は,通常のマウス,口腔内リモコンを手で操作した場合,口腔内リモコンを舌で操作した場合の3条件であり,"自動文字入力機能"を用いて行った.その結果,通常のマウス使用時を除くと,舌で操作した際の所要時間は,指で操作した場合の6~16%増にとどまり,本システムの実利用の可能性が示唆された.
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