検査室レベルではこれまでに調光型狭帯域吸収遮光眼鏡の視機能改善効果を確認している。最終年度は、この特殊眼鏡の日常生活上での有用・有効性を検討するために、白内障患者を含む15名を対象として、各被験者の吸光・調光度を最良調整した特殊遮光眼鏡を作成し、日常装用モニター試験を実施した。試用期間は当初3ヶ月(北陸・冬季間)とし、その後は同意が得られたモニター者のみに対して1年間(夏季を含む)の試用を行った。有用性はNEI VFQ-25&39日本語版(v1.4)アンケートによりQOL(quality of life)をポイントで評価した。 被験者のうち健常中年層12名では、VFQ-39の試用前総合点(0:QOL最低~100:最高)は83.8、試用後3ヵ月は86.7で2.9ポイント有意に上昇し、僅かではあるが本眼鏡による日常生活の改善が見られた。項目別にみると、「一般的な見え方」、「色覚」、「社会生活機能」が有意に改善していたが、「運転」に関して改善は見られなかった。本遮光眼鏡は色コントラストの改善効果に優れているため「色覚」の改善は妥当性がある。これによる運転での直接的な改善効果は顕著には現れないが、被験者にとって一般的な見え方の改善、つまり全体的なQOLの改善としてとらえられたものと思われる。QOLの支障を訴える白内障症例(43歳・女性)では、本眼鏡試用でVFQ総合点が54.8→69.7と15ポイントもアップし、項目別では前述の改善項目に加え、「遠見視力による行動」および「運転」で30~40ポイントの上昇が認められた。これまで車の運転、外出などに消極的であった被験者が、本眼鏡装用により積極的な行動をとるようになったと言える。今回の本検討では、屋外⇔屋内の移動における調光の悪影響はなく、本眼鏡の有効性と有用性を確認することができた。現在、1年試用時のアンケートを回収中である。
|