研究概要 |
本年度においては,基礎データ収集を目的として健常者31名に対し,ポインティングデバイス操作時の運動計測実験を実施した.本実験はポインティングデバイス(3種類のトラックボール),操作部位(示指,母指,規定なし)を変動実験条件とし,所定のカーソル移動課題をパソコン画面上に順次提示し,その指示に従い座位姿勢にて操作を行った.そして,各条件下における操作時の指の動きをモーションキャプチャシステムで撮影するとともに,カーソル移動に対する聞き取り調査を行った. 実験結果より,カーソル移動方向と指関節の可動域との関係を定量的に観察することができた.また,評価協力者の主観的評価結果から,ポインティングデバイス操作の難易度には共通したカーソル移動方向との関係があることも認められた. さらに,カーソル操作トレーニング用ソフトウェア試作のための予備実験として,画面上のカーソルの動きを見えないようにした(視覚フィードバックを隠した),ポインティングデバイス操作実験を25名(うち肢体不自由者6名)に対して実施した.その結果,期待されるカーソル移動方向と実際の操作結果とはズレが生じ,その傾向には個人差があること等,大まかな傾向が観察された. 以上の結果より,4方向以上の身体部位の随意的な動きはあるが,ポインティングデバイス操作に必要な可動域が全て同程度に保たれていない状態にある重度肢体不自由者の,身体状況等に適合したポインティングデバイス制御方法の開発およびカーソル操作実行プロセスの認知モデル再形成に対して,次年度以降の研究に有用な知見を得ることができた.
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