研究概要 |
事故などにより手が切断された切断者のため,種々の筋電義手が開発され,また市販されている.しかし国内での使用実績は極めて低い.使用されない主たる原因の1つは機能が手に比べて格段に低いことである.そのため,義手を用いてできる作業内容は貧弱で,切断者は日常生活において多大の不便を強いられており,より高機能の筋電義手の開発が強く望まれている.義手の高機能化においては,切断者が元の手と同じように義手を制御可能であること,物体把握時の感覚情報を認識できることが望ましい.本申請では,皮膚電気刺激を用いた感覚情報伝達機能を備えた筋電義手の開発を目的とする.本年度は筋電義手の柔らかい人工指先部を開発するためのヒト指先部の力学的特性を測定し,それを取り入れた義手人工指先部を試作した.まず,ヒト指腹部の力学的特性として皮膚と組織の応力と歪みの関係を測定した.被験者は健常男子4名と健常女子1名である.右腕示指の指腹部の皮膚表面をアルミ板の変位を変えることで加圧した.その時のアルミ板に加わる力,指先とアルミ板が接触している加圧領域の面積,変位から応力-歪み関係をそれらの値から算出した.その結果,歪みの増加に伴って,応力が増加するという非線形性を示した.得られた特性よりウレタン樹脂を用いて人工指先部を試作した.試作した人工指先部の応力-歪み関係が,ヒト指腹部における力学的特性と同じような特性を有することを示した.また,筋電義手を用いた物体把握実験を行い,人工指先部を用いることでイチゴやシュークリームのような壊れやすい種々の物体の把握が容易に行えることを示した.
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