研究概要 |
療法の効果を明確に示すには、立証データ(エビデンス)の提示が必要である。そこで、長期にわたってデータ収集が可能な高齢者福祉施設の協力を頂き、園芸療法の精神的、社会的、身体的効用およびQOLの向上の有無の検討を継続している。具体的には、介入前後のバイタイルサイン+入院日数の増減(特別養護老人ホームの場合)+薬物療法の推移+食事の残量などの比較検討を行うための基礎データの蓄積を行った。また、単なる園芸活動ではなく、園芸療法を取り入れた場合に見込まれる多様な効用の図式化を試み、地域全体に及ぼす園芸療法を頂点とした人間・植物関係学の多面的な効用をわかりやすく解説する試みを行っている。 これまで特に療法的な活動を行なってこなかった特別養護老人ホームを中心に、高齢者福祉施設における介護技術としての園芸療法実践マニュアルを作成するために、具体的に臨床実践を行い活動前後の施設利用者の変化の調査を開始した。また、研究成果を人間・植物関係学会,日本園芸療法学会およびISHS(国際園芸学会)等において報告を行った。調査研究として、学会参加に伴う園芸療法分野の最先端の情報収集と意見交換の実施に加えて、地域の高齢者の現状を把握するための活動も積極的に行った。現状では園芸療法の多面的な有用性を生かし切れているとは言い難いため、次年度の調査においては、今年度の結果に加えて、さらなる国内外の現状の把握と問題点の抽出に尽力し、心身のリハビリテーション的価値,社会性の向上としての価値などついて考察を深め、具体的な園芸療法実践マニュアルの作成につなげていく予定である。
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