研究概要 |
園芸療法は、多様な効用があることから、エビデンスの提示がむしろ困難な療法と考えられる。そこで、高齢者施設や地域が園芸療法を取り入れた場合に見込まれる多様な効用の図式化を試み、地域全体に及ぼす園芸療法の効用を解説できるマッピングの作成を試みた。 マッピングに使用する臨床データは、5年間にわたる高齢者福祉施設(特別養護老人ホーム、デーサービスセンター、デイケアセンターなど)における評価及びバイタルデータを参考にした。具体的には、園芸療法実践間に評価(精神面,社会面,ADL面),フェーススケール(情動面),PGC-L(QOL評価の中の主観的幸福度評価),生活健康スケールなどの評価と、発熱日数,排泄異常日数,高血圧日数,食事食べ残し日数などのバイタルデータである。それらのデータを活用しながら、医療・保健・福祉の専門家であればすぐに取り入れることができるマッピングによるマニュアルを作成し、人間・植物関係学,日本園芸療法学会および園芸学会平成24年春季大会で発表した。 結果として、視覚的に理解できやすいマッピングに成功し、基礎データおよび客観データの蓄積をもとにした、高齢者福祉施設における介護技術としての園芸療法実践の多面的な有用性をわかりやすく示すことができた。この研究成果により、理解が困難であった園芸療法の有用性やリスクを視覚に訴えることが容易な図式化を可能となり、期待される地域全体への好影響の可能性は多岐にわたっていること明確となった。全ての効用は単独で広がるものではなく、他の要素と関係を有しながら広がっていくことが明示できたことで、人間と植物の関係の有効活用が地域全体に対して多面的な効用があることも明らかとなった。
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