研究概要 |
近年少なからぬ発達障害者が感覚の過敏性や、自分の身体コントロールの巧緻性に困難を持つことが知られるようになり、特に知的障害を伴わない自閉症等の場合、感覚の訓練や身体コントロール能力を向上させる練習をすることで、社会性の困難の軽減にも役立つとの報告もあり、身体機能、知的機能、社会性の機能が相互に関係しあって生活上の困難が軽減されるような訓練方法が存在する可能性がある。一方、普及著しい家庭用ゲーム機械は使用者のモチベーションを高めるのに適している。特に、多動性・衝動性による困難への対策として、ゲームのモチベーション効果は有効である。ただし,行動の修正に困難をもつものが多いため、不適切な使用を抑制し適切な使用に誘導することが特に重要なので市販のゲーム機器やゲームソフトをそのまま利用すれば足りるものとは言えず、必要な機能とその実現方法を研究する必要がある。 本課題は以上の観点に基づく全く新たな研究課題であるので,初年度である平成21年度においては,発達障害者に多く共通する身体制御機能などの困難項目(たとえば姿勢保持困難、注視困難、感覚過敏やそれらに関連した不適切な反応行動など)、既存のゲームをそのまま適用する場合の副作用、訓練補助機器または訓練方法として必要な機能や設計に必要な仕様について検討したところ,基本項目として次のとおり設定することが必要であるとの結論が得られた。ひとつは,対象とする動作としてまず姿勢の保持,特に静止した立位,椅子座位の保持を最初の訓練項目とすることである。また,常同行動に配慮が必要で,その具体策は平成22年度に引き続き検討することとした。さらに,既存のゲームで重心動揺計的な機能を備えたものがあり,これをベースとして装置を開発することが簡便で有効な提案となるであろうとの見通しが得られた。
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