研究概要 |
本研究は、随意動作によらない意思表示システムの入力信号として交感神経系の活動を利用することを目指し、随意動作発現の過程と交感神経反応・皮膚交感神経発射活動(skin sylhpathetic nerve activity,SSNA)の関わりを分析するものである。昨年度までに、脛骨神経から記録したSSNAバーストが随意動作開始と時間的に結びついて起きることを見出し、刺激に対するorienting responseというより、動作の企図から実行に至る中枢過程やdescending motor commandがSSNAバーストに関与していると予想した。今年度は、descending motor commandの関与を検討するため、随意動作における筋収縮からのSSNAバースト潜時(EMG-SSNA時間)を経頭蓋磁気刺激によるSSNAバースト潜時や皮膚交感神経節後遠心線維の伝導時間と比較した。その結果、EMG-SSNA時間は経頭蓋磁気刺激によるSSNAバースト潜時より短く、皮膚交感神経節後遠心線維伝導時間より約80ms長いことがわかった。上肢支配の皮膚交感神経については、筋放電開始前に脊髄中間質外側核にコマンドが達していると推定される。すなわち、交感神経系へのコマンドは随意動作のdescending motor commandよりも早期に起きていることになる。メカニズムについて今後のさらなる検討が必要であるが、随意動作に伴うSSNAバースト及びその効果器反応である交感神経皮膚反応は、最終的な体性運動系出力が無くても動作の意図だけで誘発されうるといえる。動作を意図することにより、随意動作が著しく困難な運動障害者においても交感神経反応の随意性を高めることが可能と考えられた。
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