研究概要 |
自転車の運転は,バランスを保持しつつ安定走行するという主課題と,外的環境刺激に応じてハンドルやブレーキを的確に操作するという二次課題から構成される二重課題である.二重課題では,二次課題と主課題との関連性が高いほど,主課題に振り向けられていた注意資源が二次課題にも配分されることになるために主課題のパフォーマンスに多大な影響を及ぼす.本研究では,高齢者に応用可能な自転車走行シミュレータの試作をめざし,高齢者の注意配分特性を明らかにするとともに,シミュレータの具備要件を同定することを目的とした.研究期間は3年とし,初年度は運動能力と走行パフォーマンスを検討するための実験装置の試作,2年目,3年目には高齢者を被験者として走行パフォーマンスと注意配分特性を検討し,シミュレータを試作・検証する予定である.初年度である平成21年度では,高齢者の自転車利用に関する基礎的データの収集,自転車走行パフォーマンスと運動能力の関連を調べるための実験装置の試作と,大学生を対象とした基礎的実験に終始した.主な研究の結果は次のとおりである.1)東京都市部在住の高齢者では自転車の利用は日常的であり,自転車事故に関連する意識は高い.2)大学生では運動能力と自転車走行パフォーマンスとの間に特異な関係はみられなかった.3)ハンドルの振れを計測するために試作した装置は耐久性に欠けた.4)次年度に行う実験の被験者となる高齢者の確保を進めている.
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