3年目の平成23年度では、前年度より構想していた刺激提示兼データ計測システムを自転車に搭載して、走行中の脳波及び事象関連電位の計測をおこない、大学生及び高齢者での注意資源配分特性を検討することが目的であった。高齢者を被験者とする自転車走行実験は、システムとの兼ね合いから充分に安全な実験条件を確保できなかったために中止し、大学生のみを対象に実験を行うこととした。具体的には、脳波計測用アクティブ電極、中継ボックス、反応スイッチ、生体アンプおよび刺激音提示とデータ収録を同時に行うノートPCからなるシステムを自転車に搭載し、大学生11名を被験者として、自転車走行中の脳波を記録した。2種類の刺激音(500Hzと1000Hz)は8:2の確率で提示され、被験者は1000Hz音提示に対してハンドルに取り付けられた反応スイッチを左指で素早く押すという課題を与えられた。実験条件は、大学構内走行条件(屋外)、自転車エルゴメータ運動条件(屋内)の2条件で、1週間以上の間隔を置いて別々の日に実施した。被験者には、屋外走行時及び運動時のそれぞれで自身の快適なペースを守るよう指示した。記録した脳波データに対し、500Hz音(non-target)と1000Hz音(target)ごとに音提示をトリガーとした加算平均処理(解析区間:トリガー前後-200ms~600ms)を行って事象関連電位成分を得た。注意資源配分の指標である事象関連電位成分P300の潜時と振幅、反応時間などを指標に解析を進め、学会等での成果発表を予定している。
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