本研究は、アスペルガー症候群児(AS児)の発達性協調運動障害に伴う不器用な運動発現を、発達検査によるスクリーニングや障害レベルの判定だけではなく、機械的に測定することで協調運動発現状態の不具合(不器用な動き)の実態を明らかにすることを目的とするものである。また、合わせて、協調運動発達検査の結果と機械的測定で得られた結果を比較解析することで発達検査の信頼性と妥当性を検証するものである。 平成22年度の研究実施は、前年度達成できなかった東海地区を拠点に活動している某NPO法人発達障害児支援団体の研究倫理委員会で本研究の許可を取得し、加盟している6歳から12歳のAS児の内、検査・研究に同意の得られた児童を対象にムーブメントABC検査、全身反応測定、重心動揺測定を実施した。 今年度は、昨年度測定した対象児の結果と合わせてまとめ、全身反応測定と重心動揺測定に関わる分析結果を二つの学会にて発表した。各研究発表において全身反応測定結果から、AS児は健常児に比べて光刺激による視覚情報を瞬時に中枢神経系でプログラミングして運動系に情報伝達し全身を協調させて運動発揮する能力が劣っており、健常児との具体的な反応時間の差を把握することができたこと発表した。また、重心動揺測定結果からは、バランス項目の運動発達検査値との間に中程度の相関を認め、年齢の影響ではなく身長が高くなるほど重心移動の総軌跡長が短くなる傾向を把握することができたことを発表した。 平成23年度は、不足がちな年齢層のAS児の測定を急ぎ実現し、研究計画に従って論文にまとめ、研究成果を公表していく所存である。
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