研究概要 |
表面運動単位活動電位列(sMUAP列)や,それらが重畳した干渉波形(表面筋電図)をシミュレーションするために用いられるモデルはより簡便であることが望まれるが,生成される電位波形の精度がより高いことも一方で望まれる.sMUAP波形をより精密にシミュレーションする方法として,有限要素法が挙げられる.有限要素法を用いるメリットは,表面電位に影響を及ぼす電極下の表皮,真皮,皮下組織などの導電率と層の厚さをモデルに組み込んで計算できる点にある.一方で,精密さを求めると,モデルを構成する要素を細かく分割することになり,それは計算過程における行列の大規模化と計算時間の増大を招く.本研究では,種々のモデルを構築したが,主となる円筒モデルは,長さ300mm,半径40mm,60mm,表皮の厚さ0.25~05mm,真皮05~2.5mm,皮下繊3.0~5.0mmで,それぞれの導電率を種々変えて計算した.モデルの節点数,要素数は大きい場合で約36,000,000点(個)であった.電流源には双極子,三重極子やRosenfalck関数(線電流源)を用いた.シミュレーションにより得られたsMUAPは,活動電流源の深さ,強度を求める逆解析の入力データとしても用いた.シミュレーション精度への導電率不均質性の影響は表皮が大きく,電流源の深さが10mmの場合で最大30%の振幅の差をもたらした.逆解析の精度には,逆解析の中で行われる順解析計算(シミュレーション)のモデルも影響するが,こちらのシミュレーションでは有限要素法のような大規模で時間のかかるモデルを用いることは適切ではない.そして,この順解析では影像法などのより簡便な方法を用いるにしても,不均質層の影響が考慮された方がよい.この問題は,有限要素法のシミュレーション結果との対比をもとに,誤差を修正する補正関数を作成すれば解決した.
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