成長期は、身体的な発育だけでなく精神的な発達が同時に生じる。いわゆる第二次性徴期に一致した身体発育の加速現象のみられる時期である。身体的に身長の成長と骨格の成長に遅延が生じたりする例から推測すると、身体的な発育と精神的な発達の遅延に身長と骨格の関連性が関与していると考えられる。このことがいわゆる不定愁訴の発現と関連する事例をこれまで多く観察してきた。特に、気象環境の変化のなかでも大気圧変動と血圧変動の関連性を認める知見から不定愁訴発現との時期的な共通性をこれまで探究してきた。これまでに、小学生から中学生にかけての身長の伸びと血圧の関連性を縦断的な手法で観察し続けてきた。その結果、身長の伸びる第二次性徴期に差し掛かると収縮期血圧が増加する知見を得た。同時に、運動前後の不定愁訴を確認するための問診から大気圧変動が著しい(0.6hPa/h)日の翌日には血圧の変動よりも不定愁訴の発現が多く観察された。中学生の脈波伝搬速度の横断的な観察から、男子の脈波伝搬速度は学年が進むに伴い(身長の増加)増加する傾向が有意である知見を得た。一方、中学生女子については学年が進むに伴い(身長・体重の増加)脈波伝搬速度が減少する傾向が有意である知見を得た。これらのことは、中学生男子の脈波伝搬速度変化から推測すれば第二次性徴期にある中学生男子の動脈の柔らかさが一時的に硬さを増すことを示唆する。しかしながら、この動脈の柔らかさの変化は正常範囲の変動であり、このことが直接不定愁訴出現に関与する可能性は少ないものと考えられる。ところが、大きな大気圧変動に暴露された場合、このような動脈の柔らかさの変化が収縮期血圧の一時的な増大に結びつく可能性も考えられる。一方、中学生女子については男子の脈波伝搬速度変化とはミラーイメージの動態を示すが、この背景として女性ホルモンの関連性が高いと推測できる。
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