学習方略は、学習過程の中でさまざまな要因によって調整され変容していく。最終年度の本年度においては、昨年までの2年間の成果を踏まえ、学習方略の変容に大きく作用すると考えられる二つの要因の影響について実験的に明らかにすることが目的であった。1)テスト場面への転移を最大にするには、テスト場面の状況を想定した学習方略を採用することが有利であるが、そのようなメタ認知による学習方略への影響について検討する。具体的には、あらかじめ練習成果をテストされる場面を経験することが、その後の学習方略にどのような影響を及ぼすかを調べる。2)運動技術の学習はグループで行われることが多い。そこで、モデルの練習風景を観察することが、その後の学習方略の選択に及ぼす影響について検討する。 第一の目的については、最終的なテスト場面と同一の条件を予め経験しておくことによる効果は認められたものの、その影響力は弱いことが分かった。今年度、実験とは別途行った質問調査法の結果では、学習効果を高めるためにはテスト場面を意識して練習することが必要であるという認識を持っていることが示されている。このことは、テスト場面への転移を最大限にする工夫が必要であるという認識はあるものの、実際の学習行動には反映されにくいということを意味している。 第二の目的に関しては、二つのモデリング条件を設ける実験計画のうち、一方の条件のみのデータ収集にとどまったため、今年度中の分析はできなかった。ただ、今回収集した条件のデータを見る限り、モデルの影響力が極めて強いことを示唆する結果であった。
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