武道に於ける『型』のサンプルとして、柳生新陰流と一刀流を取り上げ、現在継承されているそれぞれの型を総て撮影し、それぞれの伝書・目録に記述されている内容と身体操作及び技法とを照合し整合性を確認した。次に伝承の方法について、継承者との議論を踏まえて、型に籠められているメッセージの何であるかを抽出し、型学びの理念と方法を再確認できた。 今回取り組んだ柳生新陰流と一刀流の特徴は、それぞれ「十文字勝ち」「切落し」と名づけられた極めてシンプルな刀の操作法(一刀)で千変万化のあいての技を制することにある。その「一刀」を「いつ、どのように」使うか、つまりタイミングと距離、そしてその時の身体運動あり方を分析し、型学びの構造と本質を明確し、更に、体の動きと心の動きを一体化させる具体的な場面がどこに現されているのか、映像と文言(伝書)の分析によって明確化することができた。 過去5年間、国際武道大学の特定研究プロジェクト「東アジアにおける武術の交流と展開」の共同研究者であり、日本武道の特性について議論し、基礎文献と型の実技の照合を試みてきた。その時のメンバーに研究協力を依頼しており、実技実施者2名、撮影協力者1名、文献解読協力者1名、計4名の研究協力者との論議を重ねながら、古流剣術の特徴である「三重十文字の体(たい)作り」、「すり足」、「上虚下実」、「攻防一致」「一足一刀」「機先」などをキーワードとする武道固有の心身技法モデルの祖型を作成する準備が整った。
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