本研究の目的は、各文化の担い手である舞踊家が作成した創造的身体表現(舞踊運動)を、両国の学生等が単独で、あるいは、同じ国の人と、または、他国の人と共に踊る際の体感の評価を通じて、同じ場に身体を置いての創造的身体表現活動が個々人の態度変容に及ぼす影響と異文化間の相互理解に果たす役割について考察することである。 初年度である本年は、(1)韓国芸術総合大学南貞鍋教授に依頼し、舞踊における基本感情を表す6つの舞踊運動(楽しい・悲しい・怒り・やさしい・穏やかな・厳かな)の創作とそれを収録したDVDの制作。(2)予定では、これら6つの舞踊運動について柴らが作成済みであり、それを本研究でも使う予定であったが、作成済みの舞踊運動はすべての人が踊ることのできるように作成されたものであるため、南教授作成のレベルと合わせるために、お茶の水女子大学教授である猪崎・柴が、新たに6つの舞踊運動の創作とDVDを制作。(3)お茶大舞踊教育専攻生を被験者として(1)と(2)の12の舞踊運動について、みえと体感による感情価に関する実験、及び、民族に固有な歩行をみるための歩行計測を実施。(4)韓国芸術総合大学舞踊学部卒業のダンサーを被験者に(3)と同様の実験を実施した(場所:お茶の水女子大学)。21年度の当初の計画では、6つの基本感情を表す舞踊運動の策定と舞踊運動の分析を計画していたが、南教授の協力を得て、研究の中核であるみえと体感実験を実施できた。しかし、その時期が2月であったため、研究発表を年度内にすることはできなかった。初年度に、日韓両国、それぞれの舞踊専攻生、ダンサーを被験者に6つの舞踊運動のみえと体感に関する実験を実施できたことが、韓国人研究者・被験者と本研究の意義を共有する機会となり、また次年度以降具体的に取り組むべき新たな課題を得ることができた。
|