平成21年度に日韓の舞踊専攻生を被験者に実施した舞踊運動のみえと体感による感情価に関する実験結果に基づき、平成22年度は本研究の中核を成す実験調査を、日韓の舞踊研究者・舞踊専攻生が一堂に会して12月に国立韓国芸術総合学校(ソウル)で実施した。被験者はお茶の水女子大学舞踊教育学コースと韓国芸術総合学校舞踊院創作科に在籍する学生5名ずつであり、被験者は予め決められた同国人同士の二人組と、異国人との二人組で、(1)課題の動きを二人で踊る、(2)各自、課題の動きを発展させて一まとまりの動きを創る、(3)二人組になり各自が創った動きを教えあい、二人で踊る(4)二人での即興(テーマ『対話』)という4つの課題を行った。被験者には、各課題の実践後に、活動中の体感の振り返りを自由に記述することを求めた。その結果、日韓両被験者の記述から、異国人とのデュエットでは、初めは文化が異なり言葉も通じない相手にとまどい、相手の様子をうかがい、動きを合わせることに終始しているが、実験が進むにつれて、相手の呼吸を感じ、呼吸を合わせることができるようになり、敢えて目を合わせなくても安心感があり、信頼感、一体感、意思疎通ができるようになっていき、同国人とのデュエットでは、異国人とのデュエットを経験したことで、同国人と踊る時には言葉で伝えられるということがかえって身体で感じる閾値を低くしていることに気づき、その気づきによって、最後の同国人との即興では感覚がより鋭敏になって踊れるようになっていく傾向があることがわかった。
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