平成19年度に文部科学省からの委託を受け、京都府立桃山高校で研究授業を行った際に用いたプログラムは、柔道の動きの学習の中で思考や探求を促し、伝統的行動原理の発見に導く「発見型柔道学習プログラム」であり、このプログラムを展開することで、柔道非専門教員でも生徒達の技術や学習意欲を向上させることができた。ただし、授業の対象が男子生徒であったこと、主な教材が投技であったことから、「女子にもこのプログラムが有効か」という課題や、「固技を加えて教材化する」という課題が残った。これらの課題の内、女子に対するプログラムの有効性は平成21年度と22年度に検証した。また、平成22年度には、安全の確保と学習効率アップために開発した教具の有効性を京都教育大学の柔道講座と護身術講座で検討した。講座終了後の評価の結果、動作得点は以前の授業と比較して有意に高い値を示し、教具の有効性が確かめられた。さらに、受身評価の過程で重要な指導ポイントを発見したため、受身学習プログラムを改良し、新プログラムを作成した。平成23年度の研究目的の一つは新受身学習プログラムの有効性を検討することであり、そのために平成23年度に京都教育大学の柔道、護身術講座を対象にして研究授業を実施した。講座終了後の受身評価得点を旧プログラムと比較した結果、新プログラムの得点が有意に高くなっており、新プログラムの有効性が検証できた。平成23年度の第二の目的は、抑技プログラム開発のための前提として、「柔道の抑技が発見型柔道学習プログラムの教材となり得るのか」を検討することであった。目的達成のために、京都産業大学附属高校、中学の生徒を被験者として平成23年5月に3タイプの抑え込み脱出ゲームを実施した。その結果、柔道の抑込を成り立たせている考え方は発見型柔道学習プログラムで学習の核となる柔の原理と共通しており、プログラムに組み込むことが可能な教材であることが確かめられた。
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