研究概要 |
本研究の目的は,動きが伝える感性情報を心理的指標を用いて定量化し,バイオメカニクス的分析により得られた物理情報と定量化された感性情報との相互関連性を検討することである,そこで,まず,高速度カメラと動作解析システムを用いて,動きに関わる物理情報を収集し,パフォーマンスに影響を与える物理情報を確定するための実験を行った. 課題は,4m先の目標地点に停止するようにゴルフボールをクラブ(パター)で打つこととした.時間的,空間的,力動的なイメージを表すことばを記したVisual Analog Scaleを用いて,ボールを打った時の動きのイメージの測定を行うとともに,動作分析により,移動距離,速度,角度などの物理情報を求めた.「正確性(停止地点と目標地点との誤差)」と「予測のずれ(予測地点と停止地点との誤差)」をパフォーマンスとし,誤差の評定測度には,二乗平均平方誤差,恒常誤差の絶対値,および変動誤差を用いた. その結果,「予測のずれ」の小さい(自己知覚が高い)ものは,距離や速度の物理情報がイメージに反映されていた.特に,「はやくーゆっくり」と「つよくーよわく」のイメージにおいて関連性が高かった.一方,「予測のずれ」が大きい(自己知覚が低い)ものは,物理情報と動きのイメージとの相関が認められず,物理情報が主観的・感覚的な情報であるイメージに反映されていなかった.したがって,自己知覚が高くなると,感覚受容器で獲得した物理情報を感性情報に変換し,運動イメージを構築することが可能になると考えられる.また,「予測のずれ」が小さいものは,大きいものに比べてイメージと予測位置との相関が高く,イメージの変動が大きかったことから,イメージが動きをコントロールする重要な情報であることが示唆された.
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