研究概要 |
本研究では,動きの印象(感性情報)を心理的指標を用いて定量化し,空間的物理量との関連性を明らかにした. 評定対象を作成するため,小学5年生10人のハードル走を撮影した.大学生68名(年齢19.2±0.87歳)の被験者を対象に,8つの感性語(総合的な評価:【うまい】【美しい】,時間的・力動的な評価:【速い】【リズミカル】【滑らか】【力強い】【勢いがある】,空間的な評価:【低い】)を評定項目とし,Visual Analog Scaleを用いて動きの印象を評価した. 動作解析プログラムを用いて,空間的物理量(踏切位置,着地位置,頭頂の位置,大転子の位置,上体の前傾角度)を求めたところ,「踏切位置」と感性語とに相関は認められなかったが,「着地位置」と感性語との間には,低い相関が認められ,着地位置がハードルから遠いほど各感性語に対する評価が高かった.特に,【リズミカル】【滑らか】に対する相関は,他の感性語における相関よりも高く,着地位置がハードルから遠くなるほど,「リズミカルで滑らか」な動きと評価されていた.ハードル通過時の「頭頂の位置」と「大転子の位置」は,いずれも各感性語と負の高い相関が認められた.頭頂および大転子の位置が低いほど評定が高く,特に【美しい】【うまい】では,よりその傾向が顕著であった.また,「頭頂の位置」よりも「大転子の位置」の相関係数が高かったことから,観察のポイントが,頭よりも腰の位置にあることが示唆された.「上体の前傾角度」と各感性語とには負の相関が認められ,前傾角度が小さいほど評定が高く,【うまい】【美しい】【力強い】における相関は,他の感性語よりもやや高い傾向を示した. このように,動きの印象と空間的物理量との間に関連性が認められ,特に,位置情報が動きの印象に与える影響が大きいことが明らかになった.
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