研究概要 |
本研究全体の目的は、学校の体育の授業を通じて、非言語的なコミュニケーションスキル(ノンバーバルスキル)がどのように獲得され、向上するのかを、発達的な視点を取り入れて検討することである。この目的達成のために、平成22年度は、下記に関する研究を行った。 1.ノンバーバルスキル尺度の作成 前年度の調査研究の結果を踏まえて、12項目からなる、体育授業場面を含む様々な状況で利用しうるノンバーバルスキル尺度を作成した。尺度を構成するにあたり、ノンバーバルコミュニケーションの基本的チャネルである表情、身体動作、視線、身体接触、対人距離、パラ言語のそれぞれについて、伝達および解読にかかる項目を用意した。調査1では、尺度の信頼性を確認するとともに、構成概念妥当性を検討するために、調査対象者(大学生)に、現在および中学生の時の体育授業について回答させ、尺度得点の変化の様相を、理論的予測と照らし合わせた。調査2では、基準関連妥当性を検討するために、成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田,2005)の中から、非言語的内容を含む項目を抜粋して調査対象者に回答させ、ノンバーバルスキル尺度得点との関係を検討した。 2.ノンバーバルスキルの発達を規定する要因の探索 体育授業におけるノンバーバルスキルの発達には、体育授業に対する態度や授業での経験、学校以外での運動経験等が関係していることが予想される。そこで、各年代における体育授業に対する好き嫌いの程度や得意である程度、課外での運動活動経験、さらには体育授業での経験意識を調査し、それらと現在のノンバーバルスキル、あるいは、その発達の程度との関係を検討した。その結果、体育授業に対する特定の態度やノンバーバル行動に対する認知が、ノンバーバルスキルの獲得および向上を促しているのではないかという可能性が示唆された。
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