新しい状況に創造的に関わってゆくコミュニケーション能力を育て、自己覚知や異なる価値を尊重する態度を涵養するための福祉援助技術指導プログラムモデルを開発することを目的として、プログラム参加前後の気持の変化と行動の変化の連動を検討した。 1- 即興表現指導のためのプログラムモデル45分×4回を、体育学部舞踊学専攻3年次生対象科目「ダンス・セラピー論(参加者数約70)」において実施し、昨年までに開発した4種類の身体態度に対する反応課題について、プログラム参加前後の参加者の試行を、作成された観察尺度に基づき評価し、運動・表現とコミュニケーション行動の変化を検討した。 その結果、以下の二つの傾向が見いだされた。 (1)舞踊学専攻の対象者グループは身体的即興表現には慣れ親しんでおり、身体的な態度を決めることそのものには躊躇が少ない。(2)プログラム参加前には舞踊表現を創作鑑賞するという側面の強調が見られたが、プログラム参加後には関わり行動の中身へと意識が移り、他者理解の難しさへの言及の増加とともに、運動パターンの収斂が見られた。 2-ダンス・セラピー実践家による実技指導(90分間、ドイツ語=日本語通訳)を受けた教育者、精神保健福祉関係者へのインタビューを行った。「発育発達の追跡」「夢中になること」「両極の体験」「気持と身体(の動き)の方向が一致する体験」などが身体表現を通して他者と新しく関わるスキルを育てる上で重要であるとされた。 昨年までの結果とあわせ、即興的にしかも自己の身体を感じ取りつつ他者と関わることが強調されるプログラム「ミラリング」「落書きダンス」「彫刻の森」、身体運動の発達の基本を押さえつつその質の変化を学ぶ「エフォート」と「発生から自立まで」、選択的知覚や当たり前の壁に気づく「ポストカード」は、多様性や個別性を経験し、相互関係への動機付けを高める効果が高い。
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