研究概要 |
本研究は,授業時に教師が何を認知しているのかを語るオンゴーイング認知と授業後に何を認知していたのかを語る再現認知による体育教師の実践的力量を高める手法の開発を行なっている.教師の力量を高めるねらいで行なわれる研究授業や各種研修を補うため,何を認知しているのかを授業時に「つぶやく」オンゴーイング認知と授業時に教師がどこを観ているのかの認知映像を再現する再現認知法を使って,日常の教育実践の中で力量を高めることのできる手法を開発した.今年度は,まとめの年であるため、授業時に何を認知しているのか教師が声を出してつぶやくオンゴーイング認知と,教師が何を観ているのかの認知映像を使った再現認知の有効性を明らかにするため,初心者教師と熟達教師においてオンゴーイング法と再現認知法のどちらが有効に機能するかについて研究を進めた.具体的には,様々な種目での初心者教師,中堅教師,熟達教師の授業における学習者,学習過程,学習内容等の条件を一緒にして,オンゴーイング法と再現認知法の認知の数と質を分析した.また,授業日誌法も取り入れて,教師の力量(認知)の変容を明らかにした.日誌は浅田(2000)による授業日誌法を活用した.その結果,オンゴーイング認知が熟達教師の授業時の認知を克明に表現することが可能であるとともに,リフレクション時の有効なデータとして活用することが可能であるといった示唆を得ることができた.また,教師の認知映像を再現する再現認知法は初心者教師のエビデンスを得るために有効に機能することが明らかとなった.さらに、オンゴーイング認知と再現認知では、認知の内容が一緒であることが多く、初心者教師、熟達教師の共通の認識のもとで授業分析が可能であることが示唆された。
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