研究概要 |
本研究は、「スポーツ・リテラシー」に関わった子どもの育ちと学びの履歴の実態と生活スタイルとの関連に焦点化した国際比較調査を実施しようとするものである。当該年度の研究の成果は以下の通りである。 1.組織的スポーツ活動経験と大学生のスポーツ観との関連 組織的スポーツ活動経験内容の有無や差異は,スポーツ価値意識,スポーツ像に対し,作用を及ぼしているとの結果は見出せなかった.「日常的有用性」「勝利志向」については,組織的スポーツ活動経験を有する大学生の得点が高かった.一方で,活動経験のない大学生は,「レク志向」の得点が高かった.スポーツに親しむ機会や活動を行う場としての組織的スポーツ活動の連続性や継続性に対する配慮や仕掛けを学校階梯間,学校・地域間で構築していくことの重要性が示唆された. 2.日本の中等学校における体育授業の実態 学校階梯間で比較が可能で,かつ,社会的・文化的制度的背景を異にする国および地域間でも比較可能な「学びの履歴測定バッテリー」の開発を試みた.さらに,この測定尺度を用いて,中学・高校の体育授業の現状を把握するとともに,小学校のそれとの比較を行った.特に,生徒が体育授業で獲得した学習成果,学習への構えおよび両者の関連,さらに,教師の指導性の内実と学習への構えとの関連に焦点化して分析・考察した. 3.学びの履歴調査による初等体育授業の実態に関する国際比較 学習成果次元では,実践的知識の理解,運動有能感因子で日本よりも韓国の方が有意に高い値を示した.逆に,楽しさ感得では,日本の得点が有意に高かった.一方,イギリスは,学習成果合計点にくわえ,運動有能感を除く3因子で日本よりも有意に高い得点を示した.学習への構えタイプについては,3ヶ国ともに学習志向型が最も高い割合を示していた.また,教師の指導性タイプでは,日本,イギリスでは学習支援型が,韓国では教授主導型が最も高い割合を示した.
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