研究概要 |
本研究の目的は,スポーツ指導者の熟達化過程のモデル構築および育成プログラム開発である。具体的には,スポーツ指導者が指導者として成長していく,いわゆる指導熟達化の問題に焦点を当て,選手として自身が体験した事実内容から,エキスパート指導者に至るまでの体験内容を詳細に分析することで,スポーツ指導の場における教え学ぶ相互作用の全体を多角的に捉え直す作業である。指導者がいかにしてそれぞれの節目における変容の体験を成長に結び付けていったのか分析することにより,優れた指導に結びつく行動を生起させる指導者の意識過程全体が明らかにされた。最終年度である本年度は,日本で優れた指導実績を残しているエキスパート指導者3名を対象とし,1対1,深層的,半構造的インタビューにより調査を行った。同時に,調査対象指導者による指導を受けた経験を持つ選手3名を対象とし,選手の視点から捉える指導者の思考・行動について調査を行った。得られたデータは質的データ分析法を通して多角的に指導熟達化モデルとして構築された。特に,エキスパート指導者の熟達化過程の中でも,指導者としての成長過程における心理的体験に着目して進められた。分析の結果,最終的に指導熟達化モデルは,前年度までの研究成果を受け,(1)指導者としての意識変革,(2)関係再構築への認識,および(3)指導役割の取り込み,の3つのカテゴリーから構成されることが明らかとなった。
|