今年度は視覚障害学生や、盲人ランナーなどの成人視覚障害者を対象に、文部科学省新体力テストを実施し、視覚障害者の体力の状況を検討した。反復横とびの測定においては、対象者が最も行いやすい方法を打ち合わせて実施し、20mシャトルランテストでは伴走者が伴走して測定した。測定は筑波技術大学において行った。その結果、視覚障害学生においては平均でみて、晴眼学生よりも全ての項目で低値であり、体力が低い傾向にあることがみられた。視覚障害学生の中でみると、障害の程度が軽い弱視学生のほうが重度の盲学生よりも多くの項目で高い値を示し、また過去の運動経験をもとに結果をみると、弱視学生、盲学生ともに小学校から高校において課外活動を4年以上経験した者は経験していない者よりも体力が高い傾向があった。また中高年の盲人ランナーの測定結果をみると、総合評価でD以下の者もいるが、中にはAやB評価で体力年齢が実年齢よりも若い対象者も存在していた。このことから、視覚障害者は全般でみて晴眼者に比べて体力レベルが低い傾向にあること、また、晴眼者同様日常的な身体活動の有無が体力の高低に影響していることが示唆された。さらに、視覚特別支援学校における体力測定方法等について、一部の学校にて面談調査を行ったところ、敏捷性測定は反復横とびは行わず、代わりにバーピーテストを実施しているとのことであった。実際、視覚障害学生の反復横とびと全身反応時間を測定して相関をみたところ、弱視学生では相関がみられたが盲学生では相関がみられなかったことから、視覚障害者の敏捷性に関する測定方法をさらに検討する必要があると考えられた。
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