今年度は昨年度に引き続き視覚障害者を対象に文部科学省新体力テストを実施し、視覚障害者の体力状況を検討した。昨年度と同様に、視覚障害者全般で見ると晴眼者よりもほとんどの項目で測定結果が低く、体力が低い傾向がみられた。視覚障害の程度によると、障害の程度が重い盲者のほうが、程度が軽い弱視者よりも体力レベルが低い傾向にあった。運動やスポーツの実施の状況との関連をみると、晴眼者と同様に日常的な運動・スポーツの実施の有無が体力の高低に影響していることが示唆された。また今年度は視覚障害者の敏捷性について検討を行った。視覚障害者を対象に、新体力テストの測定項目である反復横とびと、専門的な機器を用いた測定方法である全身反応時間(音刺激による)を測定したところ、障害の重度な盲者においては、反復横とびの測定結果は弱視者に比べて低いが全身反応時間の測定結果では弱視者と差はみられず、盲者における敏捷性は必ずしも弱視者よりも低いわけではないことが示唆された。また弱視者においては反復横とびと全身反応時間の測定結果に有意の相関がみられたが、盲者においてはみられなかった。現在全国の多くの視覚特別支援学校で敏捷性の測定法として用いられているバーピー・テストと反復横とびについて検討したところ、晴眼者において男女ともに有意の正の相関が認められた。このことから、視覚障害者の中でも視覚的に測定用のラインを確認できない重度障害者では、バーピー・テストを行うことで反復横とびの推測値を算出できる可能性があることが示唆された。
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