研究概要 |
本研究では,小型軽量な加速度センサとデータ転送システムを活用して,歩行および走行中の下肢に加わる衝撃加速度を計測し,下肢動作の変化と着地衝撃との関係,クッション性の異なるシューズによる着地衝撃と下肢-シューズ系の粘弾性特性との関係を明らかにすることを目的としている. 23年度においては,今までの研究成果を関連する学会に公表し,また,以下の研究を実施した. 1)異なる歩行速度と方向変換動作を組み合わせた歩行を行い,歩行速度や方向変換による下肢動作の変化と足関節の動力学的動態に及ぼす影響を検討した.方向変換動作を行うことにより足関節の外転モーメントが直線歩行よりも増加し,歩行速度が上昇すると直線歩行および方向変換動作の着地衝撃が増加し足関節モーメントも増加すること,足関節の角度とモーメントから表現した動力学的動態では受動的なバネ系による簡易弾性モデルで近似できることが明らかになった. 2)走行速度,方向変換角度,着地時の足部姿勢を変化させた走行からの方向変換動作を行い,動作の違いが膝関節の運動と負荷に及ぼす影響を検討した.走行速度の上昇により下肢三関節における前後方向関節間力と膝関節のモーメントが増加すること,方向変換が直角になると足・膝関節の前後方向関節間力と足関節モーメントが増加すること,着地時の足部姿勢が変化することにより膝関節モーメントが変化することが明らかになった. 3)粘弾性特性の異なる4種類のインソールをシューズ内に装着した歩行を行い,クッション性が高い足底部の状態が足部の安定性,下肢の筋活動状態,着地衝撃力および下肢の加速度応答に及ぼす影響を検討した.クッション性が高い状態になると着地直後の足部外反角度が大きくなること,支持脚接地中の推進期において筋活動が上昇すること,衝撃力は減少するが足部の不安定状態により加速度が増加することが明らかになった.
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