研究概要 |
本研究では,これまでに蓄積した300人以上の成人男女のキネマティクスおよびキネティクスに基づき,足関節トルクパワーと地面反力ベクトル,地面反力作用点および下肢関節キネマティクスの関係を明らかにし,下肢関節キネマティクスから足関節トルクパワーの推定を試みること,また,一定以上の足関節トルクパワー(推定値)が得られた際に歩行者に音もしくは光で知らせる機構を有するシステムを構築することにより,歩行者へのリアルタイムでのフィードバックを実現させることを目的とする. 本年度は歩行動作フィードバックシステムの構築を試みた.リアルタイムに下肢のキネマティクス情報を得るためにジャイロセンサ1個,ゴニオメータ3個,フットスイッチ1個からなる下肢動作計測システムを構築し,計測妥当性について検証を行った.本システムを装着した被験者1名(24歳男性)にトレッドミル上で4種類の速度(30,60,90,120m/min)での歩行を行わせ,同時に高速度ビデオカメラを用いて毎秒100コマ,露出時間1/500秒で歩行動作を撮影した.映像および下肢動作計測システムから得られた下肢のキネマティクスを比較したところ,速度により多少の変化はあるが,本システムから画像ディジタイズ法とほぼ同等のデータを算出できることが分かった.以上のことから,本システムを用いることにより,歩行中の下肢動作を空間の制限なく長時間計測することが可能であることが示唆された.また,本システムから得られる情報をリアルタイムに歩行者に提示することにより,歩行動作の学習に有用な歩行動作フィードバックシステムを構築できることが示された.今後はフィードバックシステムの改良と有用性の検証を行っていく予定である.
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